レストランから支援物資を ロシア包囲地域にも ウクライナ
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【4月11日 AFP】アレクサンドル・ベリュハ(Alexander Beluga)さん(39)は、ウクライナ南部ザポリージャ(Zaporizhzhia)で経営するレストランを人道支援拠点に替えた。毎日最大4000人分の食事を作り、他の物資と共にロシア軍に包囲された地域にも届けている。
自身の名を冠した店「ベリュハ」では60人のボランティアが働いていたが、うち2人は砲撃を受けて亡くなった。
ロシア兵に支援物資が盗まれることも多い。このため、スパゲティやインスタント麺など盗まれやすいものを上に置き、下の方に取られたくない物資を入れることも覚えた。
ベリュハさんは、人を支援することは「麻薬のようだ」と話す。
「物を受け取る時の人々の目…うまく説明できないが、自分には娘や面倒を見なければいけない人がいるということを忘れてしまう。それに、私がやらなければ誰がやるというのだろうか」
ベリュハさんは、モルドバ東部トランスニストリア(Transnistria)地域の都市ルブニツァ(Rybnetsa)で生まれた。同地域は1990年、ロシア系住民が「沿ドニエストル・モルドバ共和国」の分離独立を宣言した。
ロシアによるウクライナ侵攻はベリュハさんにとって3回目の戦争だ。1回目は子ども時代のドニエストルでの親ロシア派とモルドバ政府軍との紛争。2回目は父親の故郷、ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)で、親ロシア派武装勢力が独立を宣言し、政府軍と戦闘状態になった時だ。
■「ウクライナに栄光あれ!」
ベリュハさんは7年前、鮮魚店を営んでいた。肺に腫瘍が見つかり、人生を少し変えようと決めた。
荒廃した通りにあった古い工場を改装し、年に1度、食と音楽の祭典を開催している。昨年は3万5000人が集まった。
ウオッカのブランドも展開している。ウクライナ最高記録となる高さ1.5メートルのハンバーガーを作ったこともある。インスタグラム(Instagram)では「@cafe_beluga_zp」のアカウントで活動している。
ベリュハさんのレストランでは今、朝に支援が必要な人からの注文を受け、午後にはすべての注文を処理するようにしている。
焼き魚のマッシュポテト添えなど作りたての食事の他、おむつや洗面用品、衣料品などを届けている。電気を使えない人のために、充電器も用意する。
ベリュハさんの携帯電話には、ボランティアの一人、エフへニーさんの動画が保存してある。この動画が、エフへニーさんの最後の姿となった。
青いミニバンの前に立つエフへニーさんは、ロシア軍に包囲されているマリウポリ(Mariupol)に物資を届けるところだった。「ウクライナに栄光あれ!」と声を上げて出掛けて行った。
エフへニーさんは3月19日、24歳で亡くなった。2歳と4歳の娘がいた。
ベリュハさんは今、装甲車を1台買うため、小型四輪駆動車3台を売りに出している。「1台4万3000ユーロ(約580万円)する」と、レストランの上の事務所でAFPに語った。事務所には銃が置いてある。
ボランティアの一人、アンドリー・ゼイツ(Andriy Zeits)さんは「経験がないから」前線には行かないと話す。
「でも、ボランティアとして食事を作って支援している。自分にできることをしている」 (c)AFP/Liz COOKMAN