【2月19日 AFP】米国の菓子職人ニック・マルジエリ(Nick Malgieri)氏は、食に関するブログを見ていて、あるレシピに目が留まった。パネトーネというふっくらしたパン菓子のレシピで、イタリア人の祖母と過ごした楽しいクリスマスの思い出がよみがえった──。

 しかし、読み始めてすぐに、このレシピに見覚えがあることに気付いた。「思わず、『これは私のレシピだ!』と口走りました」と、マルジエリ氏はAFPとのインタビューで語った。

 マルジエリ氏はこうした不快な思いを何度もしている。数十年のキャリアと12冊のレシピ本を誇る彼は、自分のレシピをインターネットのいたるところで見かけてきた。無数のサイトで、ことわりなく勝手に引用されているのだ。

 しかも、いくつかのレシピは他の菓子職人のオリジナルとして、レシピ本にまで載せられていた。そのうちの一冊では、「フードプロセッサーで作るパフペストリー」のレシピが、「ほとんど一字一句たがわず」まねされていたという。

 食の世界にはびこっている盗用を防ぐのは難しい。

 マルジエリ氏のパフペストリーを盗んだ料理本は出版部数が少なかったため、同氏の出版社は訴えようともしなかった。

 料理人が裁判所に救いを求めても、著作権が認められたり、金銭的に解決されたりする見込みは少ない。一般的に、レシピは知的財産法で保護されていないためだ。

 この分野を専門とするニューヨークの弁護士、リン・オバーランダー(Lynn Oberlander)氏は「レシピは、食材リストや簡単な説明書きにすぎません」と語る。「例えば、スクランブルエッグに著作権を与えることができますか?」

 オリジナルレシピを保護したい料理人に残されている最後の手段は、「十分に独創性のある文学的表現」をレシピや歴史背景の説明に含めることだろうとオバーランダー氏は言う。