■イメージを変えた

 平織り、あや織り、ヘリンボーン織りが大半のハリスツイードはもともと、英国貴族や豪農が着ているイメージが強かった。過酷な天候に耐え得る丈夫な生地でできたジャケットとニッカーボッカーは、狩猟や釣りなど、上流階級の伝統的な野外活動にとって、なくてはならないものだった。

 そのイメージを変えたのは、英国デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)氏だ。パンクなデザインの服にハリスツイードを取り入れた。他にも「シャネル(Chanel)」や「ディオール(Dior)」、「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」、「エルメス(Hermes)」などもコレクションの主要な要素として使用している。スポーツブランドの「ナイキ(Nike)」も15年前、ハリスツイードを使ったスニーカーを生産した。

 ハリスツイード製造元の最大手ハリスツイード・ヘブリディーズ(Harris Tweed Hebrides)の営業部長、マーガレット・アン・マクロード(Margaret Ann Macleod)氏によると、最近は米国の「ポロラルフローレン(POLO RALPH LAUREN)」もよく取り入れている。

 湖畔にあるハリスツイード・ヘブリディーズの工場では約70人の従業員が羊毛の染色と紡績を行い、120人前後の職人に外注している。ハリスツイードを織る技術は、何世代にもわたり受け継がれてきた。

 織られた生地は工場に戻され、洗浄と乾燥の工程を経て仕上げられる。

 マクロード氏によると、輸出先はフランス、ドイツ、イタリアをはじめとする欧州諸国や韓国、日本、米国など。最近では、中国も新たな輸出市場になっている。

 アウターヘブリディーズ諸島の自宅でハリスツイードを織る職人は約160人。3工場と提携し、年間計150万メートルの生地を生産している。

 マクロード氏は、「60色くらいから始めて、それらを組み合わせて180以上の色調の紡績糸を作り、アウターヘブリディーズの陸や海の景色を表現します。(中略)濃い茶色は荒れ地、青は大西洋というように」と説明する。

「若いデザイナーは、色を探しにやって来ます。本物を求めて。手織りであること、(そして)私たちが独自の毛糸を作り出していることが重視されています」 (c)AFP/Pauline FROISSART