■特定の主食に頼らない方法も

 イモやコメ、コーヒーなどの作物は、品種改良される前は、高温や塩水への耐性が遺伝子に組み込まれていたのかもしれない。その遺伝子を取り戻すため、専門家は野生の祖先種を探し求めている。

「生物多様性をできる限り活用する必要があります」と、生物多様性の研究開発機関「バイオダイバーシティーインターナショナル(Biodiversity International)」の農業専門家マーレニー・ラミレス(Marleni Ramirez)氏は言う。「生物多様性はリスクを減らし、選択肢を生みますから」

 祖先種が入手できそうなのは遺伝子銀行だ。例えば、英国のキュー王立植物園(Royal Botanical Gardens, Kew)にある「ミレニアムシードバンク(Millennium Seed Bank)」には、4万種近い野生植物の種子が保存されている。

「それでも、すべての野生近縁種が遺伝子銀行にあるわけではありません」とクロップトラストのキリアン氏は言う。

 そうなると、時間をかけて自然の中で祖先種を探し回るのは植物学者の仕事になるが、成功するかどうかは運だとキリアン氏は話した。

 野生植物は大規模農業には適さないかもしれない。新しい品種の開発には数年、あるいは数十年かかる可能性もある。それでは、差し迫った食料危機への対処には間に合わない。

 代わりに、特定の主食に頼らない方法を見つけ出す必要があるかもしれないと専門家は述べている。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、地球には約5万種類の食用植物が存在するが、そのうちのわずか3種類、コメとトウモロコシと小麦が世界の食料エネルギー摂取量の60%を占めている。

 この3種類が栽培できなくなったら、数十億人は何を食べればいいのか途方に暮れ、多数の農家は別の生計手段を探さなければならなくなるかもしれない。(c)AFP/Amelie BOTTOLLIER-DEPOIS