■ISの台頭

 重大な転機となったのが、アルカイダと敵対するイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」がイラクとシリアで台頭したことだった。アルカイダの影響力はビンラディン容疑者の死後弱まった一方、ISの影響力は増大した。

 テロとの戦いは、費やされたリソースの規模に照らし合わせれば、悲惨な結果に終わっている。失敗の一因となった大きな過ちの一つとして問題視されているのが、2003年に米国主導の多国籍軍がイラクに侵攻し、当時のサダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領を失脚に追い込んだイラク戦争(Iraq War)だ。

 CSIS国際安全保障プログラムのディレクター、セス・ジョーンズ(Seth Jones)氏は、イラク戦争が「アルカイダを復活させ、IS出現の下地をつくった」と指摘する。

 専門家によると、テロとの戦いでは軍事作戦に重きが置かれ、ジハード主義の温床となる戦争、混乱、劣悪なガバナンス(統治)、汚職については十分に考慮されなかった。

 英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)過激化研究国際センター(International Centre for the Study of Radicalisation)のトーア・ハミング(Tore Hamming)研究員は、「シリアで起きたような紛争では、短期間で多数の戦闘員が過激化され、動員され得る。外部の世界はそれについて、ほとんどなすすべがない」と語る。

 ハミング氏は、「恐らく、最大の問題は軍事的なものではない」と指摘。イスラム武装勢力が人を集めるのを防ぐ上で最も有効な手段の一つは、武装勢力に参加するよりも良い選択肢を与えることであり、「それは武力では不可能だ」と述べた。