【9月2日 AFP】8月31日に行われた東京パラリンピックの男子砲丸投げ(知的障害F20)決勝で、集合時間に遅刻したマレーシア人選手の金メダルが取り消される出来事があった。国際パラリンピック委員会(IPC)は1日、大会側の決定を支持するとの見解を示したが、選手の母国マレーシアでは怒りの声が爆発している。

 競技後に棄権扱いになったのは前回リオデジャネイロ大会でも金メダルを獲得したムハマドジヤド・ゾルケフリ(Muhammad Ziyad Zolkefli)で、同選手は集合時間に遅刻していたものの当初は出場を認められ、世界新記録で優勝した。

 しかし大会側はその後、正当な理由もなく待合室への到着が遅れたとし、ゾルケフリら3選手を棄権扱いとすると発表。その結果、2位だったウクライナのマクシム・コバル(Maksym Koval)が金メダルに繰り上がった。

 IPCのスポークスマンを務めるクレイグ・スペンス(Craig Spence)氏によれば、審判はゾルケフリの遅刻に「正当と認められる理由がない」と判断し、その後の異議申し立ても却下された。

 だがそうした状況の中で、金メダルに繰り上がったウクライナの選手が「マレーシアの人たちから大量の誹謗(ひぼう)中傷を受けている」事態にも発展しているという。

「彼らはウクライナ人選手が金メダルを盗んだと主張している。絶対に違う。ウクライナ人選手とは無関係だ。問題は遅れてきたアスリートにある」と述べたスペンス氏は、「多くのマレーシアの人の感情がソーシャルメディアで爆発している。極めて攻撃的で、個人的にはばかげていると思う」と付け加えた。

 遅刻した3選手は集合について聞かされていなかった、または理解できない言語でのアナウンスだったと主張しているというが、スペンス氏は他の選手は時間通りに集合場所に来たと指摘している。

 しかしソーシャルメディア上ではゾルケフリの金メダル取り消しを受け入れる気配はなく、マレーシアのカイリー・ジャマルディン(Khairy Jamaluddin)科学・技術・イノベーション相は「恥ずべき決定」だと批判。「完全なる面汚しで、パラリンピックの精神に反する。卑劣でせこい。金メダルと世界記録が盗まれた」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 また、マレーシア王室も声明を出し、「再発防止に向けた棄権扱いの理由の調査」を国王が関係当局に求めたという。ゾルケフリ本人は自身のインスタグラム(Instagram)で謝罪し、マレーシア国民の支援に感謝の言葉をつづっている。(c)AFP