【7月21日 CNS】中国で中医薬や薬膳料理に使われるキノコの一種、冬虫夏草の出荷シーズンを迎え、中国西部の青海省(Qinghai)西寧市(Xining)にある玖鷹(Jiuying)冬虫夏草市場がにぎわいを見せている。価値が高く「軟らかい黄金」とも呼ばれる冬虫夏草が布や新聞紙に敷かれ、業者と客の間で取引が行われている。

 青海省の冬虫夏草の年間生産量は約100トンで、生産額は約180億元(約3040億円)。中国の総生産量の6割以上を占め、同省の100万人の農民、牧畜民が利益を得ている。

 冬虫夏草を販売する王立強(Wang Liqiang)さんは「今年の生産量は昨年より少し多い分、価格は少し下がった。土付きの新鮮な冬虫夏草は1斤(500グラム)あたり4000元(約6万7520円)以上で売れる。仮に売れなかった場合でも、乾燥させて1斤あたり約3万元(約50万6390円)で売れる」と話す。

 冬虫夏草の商売を40年続けている馬進財(Ma Jincai)さんは冬虫夏草を透明な管に入れて5本ごとに梱包し、顧客の元に届けている。「冬虫夏草は大きさや見た目で価格も大きく変わる。最も高価なものは1袋が数百元で売れ、最も安いのはわずか20元(約337円)だ」と説明する。「以前は干した冬虫夏草を食べることが多かったが、ここ数年で新鮮な冬虫夏草をそのまま食べることが人気になり、干した物より早く売れるようになった」と馬さん。自分も毎日3本の冬虫夏草を食べるのを欠かさず、「新鮮なものは数か月冷蔵しても劣化しないよ」と教えてくれた。

 32歳の丁士俊(Ding Shijun)さんは自らを「青海チベット高原を歩く洮州(Taozhou)商人」と称する。故郷の甘粛省(Gansu)甘南チベット族自治州(Gannan Tibetan Autonomous Prefecture)臨潭県(Lintan)が古くから「洮州」と呼ばれていることが由来。洮州の人々は数百年前から、現在の青海省や四川省(Sichuan)、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)で店を開いたり商品を売ったりしてきたという。

 祖父の代までは他の商品とともに冬虫夏草を買い付けていたが、丁さんは冬虫夏草の人気が高まっていることに着目し、冬虫夏草を専門とする貿易会社を設立。年間約1000キロを販売している。「冬虫夏草の大半は流通拠点である広州市(Guangzhou)に卸売りされ、沿岸部の都市や香港、マカオ(Macau)、台湾で小売りされる」という。

 最近盛んなのは、インターネットのライブ中継販売だ。「多くの商品を売っているインフルエンサーにライブ販売を依頼し、私たちは冬虫夏草の乾燥や梱包作業を視聴者にアピールする。利益はインフルエンサーと分配している」という。

 最近は人工栽培の冬虫夏草も市場に出回り始めている。青海省の研究チームによると、冬虫夏草の需要は世界的に増え続けており、10年以内に人工栽培は大規模なレベルに達して農家や牧畜民の収入がさらに増えると予想される。

 丁さんは「人工栽培の冬虫夏草は大きいが軽いので、野生との違いは一目で分かる。野生の希少性は変わらないため、冬虫夏草市場に大きな影響はないと考えている」とみている。(c)CNS/JCM/AFPBB News