【6月4日 AFP】フランスで3日、ソーシャルメディアに反イスラム的な投稿をして警察の保護下に置かれた10代の少女に対し、ネットで殺害予告などの脅迫を行ったとされる13人の初公判が開かれた。

 昨年1月、当時16歳だったミラさんはインスタグラム(Instagram)にイスラム教をけなす最初の投稿をし、「コーラン(Koran)は憎しみで満たされている、イスラム教はクソみたいな宗教だ」と書き込んだ。

 同11月、表現の自由を扱った授業でイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を生徒らに見せた教師サミュエル・パティ(Samuel Paty)さんが、イスラム過激派の男に斬首されて死亡する事件が発生すると、ミラさんは2本目の動画をティックトック(TikTok)に投稿。アラビア語で「神」を表す言葉を使い、「あなたの仲間であるアラー」を非難した。

 だが、この動画に対し、ネットではすぐに猛反発が起き、届いた脅迫の中には「お前も斬首に値する」というものや「サミュエル・パティと同じようにしてやる」というものもあった。

 ミラさんは、南東部リヨン(Lyon)郊外の町ビルフォンテーヌ(Villefontaine)で家族とともに警察の保護下に置かれた。

 ミラさんの行動は反響を呼び、宗教的信条を傷つける権利に関する議論が活発になっている。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領さえも、「法律は明確だ。私たちには宗教を冒涜(ぼうとく)したり、批判したり、風刺したりする権利がある」と述べ、ミラさんを擁護した。

 ミラさんの代理人弁護士リシャール・マルカ(Richard Malka)氏は法廷で、「(ミラさんが)10万件以上の憎しみに満ちたメッセージや殺害予告を受け取り、中には縛る、切り刻む、四つ裂きにする、斬首するといった脅迫もあり、ひつぎの画像やミラさんが首を切られたように加工された写真もあった」と述べた。

 捜査当局は最終的に、さまざまな地域に住む18~30歳の13人を特定し、ネットでの嫌がらせや殺害予告などをしたとして起訴した。

 ネットでの嫌がらせで有罪となれば、2年以下の禁錮刑と3万ユーロ(約400万円)の罰金刑を科される可能性がある。

 一方、殺害予告の最高刑は禁錮3年で、これまでにミラさんに対する殺害予告で有罪判決を受けた2人が科された。

 この日の裁判は手続き上の質問のみで閉廷した。次回公判は21日。

 ブロンドの髪のサイドをかり上げたミラさんは報道陣に、「匿名性はない。インターネットで罪を犯せば、犯人は即座に見つかる。裁判にかけられる可能性もある」と語った。「だから私たちはきょう、ここにいる。そのことに気付くべき時だ。『恐怖する立場は逆転した』と言いたい」

 ミラさんは、「脅迫や嫌がらせを前にして何もせずに屈し続ければ、事態は悪化するだけだ。数の力で対抗しなければならない」と述べ、協力を呼び掛けた。

 現在18歳のミラさんはイスラム教を批判することで、言論の自由の擁護派だけでなく右派からも支持されており、今月には「あなたの自由のために私は犠牲を払う」というタイトルの本を出版する。(c)AFP