■「誰もがランジェリーを好き」

 灌雲県の産業改革にも苦労があった。

 スタッフたちは初めてランジェリーを見たとき、「よく理解できなかったようです」と語る工場主の常凱林(Chang Kailin、チャン・カイリン)さん(58)。雷さんの叔父でもある。「それでも、この産業が大きく、強くなって、皆が稼げるようになり、貧乏から脱しました」。「今では、誰もがランジェリーを好きです」と言う。

 雷さんの工場で生産されるランジェリーの90%は輸出用だ。ほとんどが米国と欧州向けだが、南アフリカへの輸出も多い。その他のアフリカ、中東、東南アジアでも需要がある。

 雷さんがこれまでで最大の注文を受けたのは、2012年。北朝鮮の未知のバイヤーから、100万ドル(約1億800万円)分のオーダーが入った。だが、この商談は説明もなく打ち切られた。

 ランジェリーで灌雲県は変貌した。今や麦畑の脇に工場が立ち並び、新築の家や車が豊かさを象徴している。約100万人の県民の多くは、かつて遠く離れた工場で厳しい出稼ぎ労働に耐えたが、今はそれもない。

 灌雲県は最近、ランジェリー中心の工業地区の建設に着工した。総工費5億ドル(約544億円)。690ヘクタールの敷地に研究開発やデザイン、eコマース運営も統合する。

 コロナ禍のロックダウン(都市封鎖)で昨年は落ち込んだ生産も立ち直っている。だが、海外需要は依然として弱い。消費者の出費が基本的な生活必需品に集中しているからだ、と雷さんは指摘する。「こうした問題が片付けば、また活気が戻るでしょう」 (c)AFP/Dan MARTIN