【4月29日 AFP】カナダ最高裁はこのほど、政府が50年前に「絶滅」を宣言した先住民シナイクスト(Sinixt)について、米国に現在も暮らす子孫約3000人にカナダ国内での「先住権」を回復するとの判断を下した。

 米先住民グループ「シナイクスト・ネーション(Sinixt Nation)」は、現在の米ワシントン州ケトルフォールズ(Kettle Falls)からカナダ・ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州のレベルストーク(Revelstoke)にかけて広がる渓谷における先住権を主張している。

 最高裁は23日、賛成7、反対2の賛成多数で、シナイクスト・ネーションがカナダ国内で狩りを行う権利はカナダの憲法で保障されていると判断。「移住した先住民、移住を強制された先住民、国境により伝来の土地を分断された先住民を排除することは、植民地主義の不正を助長する」と説明した。

 この判断は、他の先住民にも広く影響するとみられる。カナダ国籍を持たない人や、カナダに住んでいない人でも、欧州からカナダへの入植が始まった時期にカナダ国内の土地にルーツがあることを証明できれば、カナダにおける先住権を主張することが可能だからだ。

 カナダ政府は1956年、シナイクストの国内最後の一人が死亡したことを受けて民族の「絶滅」を宣言。シナイクストの先住権は事実上消滅した。

 しかし、この状況を変えようと2010年、シナイクスト・ネーションに属する男性1人が米国からカナダ・ブリティッシュコロンビア州内の先祖がかつて暮らしていた土地を訪れ、猟銃でワピチ(アメリカアカシカ)を仕留めた。男性は、無許可で狩猟したとして自然保護当局から罰金を科されたが、不服を申し立て、法廷闘争となった。

 検察側は、男性がカナダで承認されている先住民ではないことを理由に、カナダ国内で儀式のために狩猟を行う権利は男性にはないと主張した。

 だが、裁判官は、シナイクスト・ネーションの人々のほとんどが現在米ワシントン州に住んでいるとはいえ、先祖は1811年に外部と初接触した頃にブリティッシュコロンビア州内で狩りや漁を行っていたと認定。男性は無罪となった。検察側は上訴し、最高裁の判断を仰ぐ展開となっていた。(c)AFP