【10月12日 AFP】ナイジェリアは11日、暴力犯罪に対処する警察の特殊部隊「対強盗特殊部隊(SARS)」を解体した。この部隊は長年にわたり市民を虐待してきたとされ、抗議デモで死者も出たほか、ソーシャルメディアではミュージシャンや映画界の著名人も加わって解体を求める運動が起きていた。

 英ロンドンのナイジェリア大使館前で開かれた集会に参加していた数百人は、SARS解体のニュースを知って喜びをあらわにした。

 その場にいたナイジェリアのアフロポップのスター、ウィズキッド(Wizkid)さんは、「われわれが勝った!」と叫び、「みんなの声が届いた。これは新しいナイジェリアの幕開けだ。私たちは自分の考えを話すことを恐れない」と語った。

 最近、ナイジェリア南部のデルタ(Delta)州で警察官が男性を殺害した場面とされる映像がネット上に拡散し、SARSの行動に対する懸念が猛烈に高まっていた。当局はこの映像は本物ではないとして撮影した男性を逮捕し、人々の怒りに火を注いだ。

 デルタ州警察のハフィズ・イヌワ(Hafiz Inuwa)本部長は、南部の町ウゲリ(Ughelli)で8日に行われた抗議行動で、デモ参加者と警察官各1人が死亡、さらにもう1人が命に関わる重傷を負い、9人を逮捕したと明らかにした。

 9日には、ナイジェリア南部の主要都市の多くで大規模なデモ行進が行われた。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は6月に公表した報告書で、2017年1月から2020年5月の間にSARSが幹部の指揮監督の下で行ったとする拷問、虐待、超法規的殺人の82の事案を列挙した。

 アムネスティ・インターナショナルは、SARSが「組織的な拷問」を行ったと非難し、ナイジェリア警察には拷問室が存在すると主張。被害者のほとんどは、低所得で社会的に弱い立場にある18~35歳の男性だという。

 アムネスティの報告書は、「多くの場合、(被害者は)違法に逮捕・拘束され、釈放と引き換えに巨額の賄賂を渡すことを余儀なくされている。賄賂を払えない人は拷問や虐待の対象となる」としていた。(c)AFP/Sophie BOUILLON with Louise DEWAST in London