■危機の長期化

 キリスト教徒とイスラム教徒によるパワーシェアリングは、1943年にフランスの委任統治下から独立する際に定められた不文律の「国民協定」によって決められた。

 1975年から1990年まで続いたレバノン内戦前までは、キリスト教徒により大きな権限が与えられていた。

 サウジアラビアの仲介で1989年、権限強化を求めるイスラム教徒とキリスト教徒の平等を図る政治改革を盛り込んだ内戦終結を目指す国民和解憲章(タイフ合意)が採択され、翌年内戦は終結した。

 タイフ合意により、キリスト教の大統領の権限の一部が、首相と議会に移された。また、これにより成立した権力の配分制度は、暫定的な臨時措置のはずだった。

 だが、実際には、戦闘服をスーツに着替えた元軍閥指導者の権力が明文化され、宗派に基づき公的部門の幹部職を分かち合う結果となった。

 また、すべての主要な問題について、大統領、首相、国会議長という「三頭」の合意が必要となる、コンセンサスに基づく意思決定方法の基礎を築いた。

 この結果、政治的立場の違いが危機を長期化させることが定期的に発生し、論争を解決する仕組みも存在しない状況に陥った。(c)AFP