欧州企業、米IT大手と相次ぎクラウド提携 データ利用に懸念
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【8月7日 AFP】欧州は現在、ゴールドラッシュ時代の「金鉱」のような存在であるデータを豊富に持っている。しかし専門家らは、欧州はこのデータ鉱山を自ら開拓するのではなく、掘削機器を米国のIT大手に渡してしまっていると指摘する。
欧州企業は相次いで、米IT企業のクラウドサービスとの提携を発表している。
ルノー(Renault)、オランジュ(Orange)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、ルフトハンザ航空(Lufthansa)は最近、グーグル・クラウド(Google Cloud)をパートナーに選んだ。フォルクスワーゲン(VW)はアマゾン・ウェブサービシズ(Amazon Web Services)と契約、フランス保健省は研究データの保管先をマイクロソフト(Microsoft)に決めた。
米クラウドサービスの利用については、特に産業分野が強くデータの宝庫となっているドイツが懸念されている。
ドイツのソフトウエア大手SAPの元最高経営責任者(CEO)ヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏が率いる、専門家とメディアの指導者で構成されるグループは報告書で、欧州連合(EU)は「現在、欧州経済において中心的役割を果たしているが、デジタル分野での影響力を失いつつある」と警鐘を鳴らした。
さらに、「欧州のデータの大半は欧州外に保管されている。または欧州内であっても、欧州以外の企業のサーバーにある」と指摘している。
参加者の匿名を守ることを条件にAFPが参加した会議で、フランスの政府高官は「クラウドについて、われわれは安全保障と主権に関する非常に大きな問題を抱えている」と述べた。
欧州が懸念する理由の一つに通称「クラウド法」がある。同法は2018年に米国で成立したもので、これにより米情報当局は特定の場合、米企業が保管するデータをサーバーの物理的な設置場所を問わずに取得することが可能になった。
多くの欧州の専門家と政策担当者はデータの完全性よりも、情報が分析され、利用される可能性を懸念している。
先の政府高官はまた、もし欧州が「データを生成できるだけで、活用には他者が必要となるのならば、最終的には資源国が自国の鉱物資源の処理を他国に頼って、わずかな経済的利益しか得られないのと同じ状況に陥ってしまう」と指摘した。
フランスとドイツは今年6月、欧州発の競争力のあるクラウド開発を目指すプロジェクト「ガイアX(GAIA-X)」を発表した。
このプロジェクトは、米ボーイング(Boeing)に対する欧州のエアバス(Airbus)のような、全領域を網羅する巨大な存在をつくるのではなく、複数の企業がシームレスにデータの保管、処理、セキュリティー、人工知能(AI)といったサービスを提供できるよう基準を設定することを目的としている。
各顧客が欧州の管轄内で必要なサービスを見つける、マーケットのような場になるという。(c)AFP/Laurent BARTHELEMY