■「子どもの頃に虐待を経験している確率が高い」

 米ハーバード大学および米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)の心理学者キャサリン・バーディック(Katherine Burdick)氏は、双極性障害は「より遺伝性が高い精神疾患の一つ」として知られていると語る。両親のうちどちらかに双極性障害がある場合、その子どもが発症するリスクは10~20%だ。

 さらに環境要因の可能性もある。

 バーディック氏は、全員ではないが多くの患者は「子どもの頃に心の傷や虐待、ネグレクト(育児放棄)を経験している確率が高い」と指摘する。

 薬物乱用もリスク要因の一つで、女性は男性よりも年齢を経てから発症することがある。

■新型コロナウイルスで悪影響が

 治療の基本は気分安定薬だ。

 専門家らは、「社会的リズム」の混乱が双極性障害に果たす役割についての解明も始めており、その療法への注目が集まっている。

 例えば、ペットの死は、そううつのサイクルを引き起こす可能性があるが、こうした出来事を詳しく研究した結果、患者はペットロスだけに影響を受けているわけではないことが分かってきた。

 ニューヨークのスタテンアイランド大学病院(Staten Island University Hospital)精神科長のティモシー・サリバン(Timothy Sullivan)氏は、「患者に精神的な苦しみをもたらしているのはペットロスだけではない。その患者は、犬が生きていた頃は散歩に連れて行って運動し、早起きして社会的な交流を保っていた」と指摘する。

 双極性障害の人々は、こうした社会的リズムの混乱による影響を受けやすく、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な大流行)やロックダウン(都市封鎖)などの出来事には特に悪影響を受けやすい。