■惑星規模の砂塵(さじん)嵐

 火星滞在中に起こり得る大きな問題の一つは、火星の表面を覆う細かい塵(ちり)による居住環境と車両への損傷だろう。

 これについて、NASAのジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)のロバート・ハワード(Robert Howard)氏は、「火星は砂塵嵐の懸念がある」と指摘する。

 火星では、惑星規模で砂塵嵐が数か月間にわたって吹き荒れるため、砂によって太陽光が遮られ、太陽電池パネルが使い物にならなくなることが考えられる。そのような理由から、小型の原子炉が必要になる可能性もある。

■コロニー化?

 スペースXのマスク氏は、火星のコロニー化計画を提案している。この計画では最初の遠征で、火星にある水と大気中の二酸化炭素(CO2)を酸素とメタン燃料に変換する工場を建設する。

 火星探査・定住計画を推進する団体「マーズ・ソサエティー(Mars Society)」のロバート・ズブリン(Robert Zubrin)代表も、マスク氏と同様に「人類文明の新たな分枝」の形成を提唱している。

 ただ、こうした提唱について、フランス国立宇宙研究センター(CNES)の宇宙生物学者ミシェル・ビソ(Michel Viso)氏は、「たわ言は、もうたくさんだ」と語気を強める。

「人類には大気や酸素、水が存在する素晴らしい惑星がすでにある。人類が火星文明を築く『プランB』や『惑星B』が存在するなどと人々をだまして信じ込ませるなど許せない。全くけしからん話だ」

 他方で、デューク大のバックランド氏は、人類がコロニーや永久基地を設置しようがしまいが、火星で人類が存続するための最大の障壁は、月やISSよりも高いリスクがあると人々に受け入れさせることだと指摘する。

 やはり火星のような遠いところに行ってしまうと、そう簡単には帰還できなくなるということなのだろう。(c)AFP/Ivan Couronne