■IS内での信頼獲得が課題

 2004年に米軍に拘束され、イラク南部に米軍が設置していた収容施設キャンプ・ブッカ(Camp Bucca)でバグダディ容疑者と知り合った。

 釈放された後もマウリ容疑者は、2010年にアルカイダのイラク支部の指揮権を握ったバグダディ容疑者と行動を共にし、さらにアルカイダを離脱し「イラクのイスラム国(Islamic State of IraqISI)」を創設する。この組織が後に「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIL)」や「イラク・シリアのイスラム国(Islamic State in Iraq and SyriaISIS)」の別称を持つISとなる。

 CEPによると2014年、マウリ容疑者は「アルカイダを離れる前に」バグダディ容疑者をモスルに迎え入れ、「過激派の使命への忠誠と全面的な支援を誓い、ISISが迅速にモスルを掌握できるよう支援を提供した」。

 CEPが作成したプロフィルによると、マウリ容疑者は「すぐにこの反政府組織の幹部の中で自らの地位を確立し、『教授』や『破壊者』といった愛称で呼ばれるようになった」という。

 米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のセス・ジョーンズ(Seth Jones)氏はAFPの取材に対し、「現場では今も彼に対する不満がある。どのような組織運営を行っていくのか、指導者としてどのくらい有能なのか、カリフ制国家の再構築にどの程度成功できるのか、人を鼓舞する力がどれほどあるのか、今も疑問視されている」と述べた。

 さらに、「カリフ制国家の再建に成功し、米軍が撤退し、ISが他国を利用することができれば、出自に対する懸念は減るだろうが、それは長い道のりになるだろう」と続けた。

 ISの勢力は弱まっており、2015年のパリ同時襲撃事件のような大規模攻撃が起こる可能性は今のところ低い。だが、規模や破壊度では劣るが、欧米への象徴的な攻撃が起こる可能性を当局は排除すべきではないと、ジョーンズ氏は警告している。(c)AFP/Didier LAURAS