■「ズーム」でリハーサル

 ベルギーとコロンビアをルーツとし、オランダを拠点に活動する振付師アナベル・オチョア・ロペス(Annabelle Ochoa Lopez)氏は、この数か月、ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」で短い作品を次々発表し、今やダンス界の「ズームの女王」だ。

 そう呼ばれるようになったのは、たまたまだと語る。「ノルウェー国立バレエ団(Norwegian National Ballet)を退団するフランス人ダンサー2人が、お別れ公演ができないため、私に連絡してきた。ズームで自分たちの作品をつくれないかと」「2人には3人子どもがいて…子どもたちが時々ソファからあいさつしていた」

 そうして生まれた作品「Where do the birds go?(『鳥はどこに行く?』の意)」では、ジュリー・ガルデット(Julie Gardette)さんとフランソワ・ルソー(Francois Rousseau)さんは実際にソファの上で踊っている。

 オンラインでの制作で、オチョア・ロペス氏の仕事のやり方も変わったという。

「アイデアを伝えるために話さなければならないことが増え、まなざしの演出も増やさなければならない。画面は、舞台よりもずっと親密なものだから」「もちろん、スタジオが恋しい」と同氏。「でも、この経験から何かを得ようと思っている」

 一方、フランス南西部のトゥールーズ・キャピトル・バレエ(Capitole Ballet of Toulouse)の芸術監督、カデル・ベラルビ(Kader Belarbi)氏は、演出のデジタル化でダンサーと同じ場にいる体験が終わってしまわないよう願っている。

 画面で見ると「生のパフォーマンスで伝わるものが伝わらなくなる」とベラルビ氏は主張する。

 同氏は現在、仏画家アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック(Henri Toulouse-Lautrec)にまつわるバレエを創作中だ。複数のソリストと4組のダンサーが出演し、「単独の各フレーズ(ひとまとまりの動作)を後で組み合わせる」という。(c)AFP/Rana MOUSSAOUI