【6月29日 東方新報】日本でもカンフー映画などで有名な中国・河南省(Henan)の少林寺(Shaolin Temple)。実はこの武術の聖地も、新型コロナウイルスの影響で活動を停止していた。6月22日から5か月ぶりに一般開放を再開し、観光客の前で元気な姿を見せている。

「それぞれが感染対策を徹底し、訪問客の安全を第一に考えること。くれぐれも自分勝手な行動は取らないように」。22日午前9時、寺を取り仕切る永信(Yong Xin)和尚が居並ぶ若い僧たちに呼びかけるとともに、少林寺の山門がゆっくりと開いた。法師の案内で観光客が順番に境内へ入ってくる。入場は予約制で、一人一人検温をした後、互いに距離を保ちながら見学した。

 少林寺は北魏の時代の495年に開山したという中国曹洞(そうとう)宗の名刹(めいさつ)だ。正式名称を「嵩山少林寺」といい、その名の通り中国五霊山の一つ・嵩山(Songshan)にある。ダルマの由来となった達磨大師がインドから招かれ、少林寺で禅宗を興したとされ、世界遺産にも登録されている。

 境内には、大雄宝殿を中心とした壮麗な伽藍(がらん)が見られる。「塔林」と呼ばれる場所には、歴代の高僧が眠る高さ15メートルほどの仏塔が200基以上立ち並び、広大な林のようだ。まさに映画に出てくるような風景の中、若き僧たちが武術の修行をしているところを見学できる。山門のイチョウの木には樹齢1000年以上のものもあり、修行僧が指で突いたという幹には無数の穴がある。近年は観光地としても力を入れており、少林寺グッズの販売、僧侶たちが食べている精進料理の提供、伝統の薬茶販売、武術ショーなども楽しめる。ちなみに、現在の嵩山少林寺と日本の少林寺拳法とは直接の関係はない。

 その武術の聖地も、「見えない敵」である新型コロナウイルスには動きを封じ込められた。ウイルスの感染が拡大すると、少林寺は観光客の受け入れを停止。「三密」防止のため、武術修行など境内での活動も停止した。僧たちはそれぞれ「心の修行」に励み、医療支援物資を各地に寄贈する活動に努めていた。

 両足を広げて腰を落とす少林武術のおなじみの基本姿勢は、「馬歩(Mabu)」と呼ばれる。「馬歩に始まり、馬に終わる」ともいわれ、馬歩が安定するまでに3年の修行が必要とされる。この基本の形を保つことで、相手の攻撃を受けても動じず、無駄なく拳の威力を伝えることができる。長きにわたる新型コロナウイルスの「攻撃」にじっと耐え、少林武術を多くの人々に披露する日々が戻ってきた。(c)東方新報/AFPBB News