■健康問題が絶対的な価値ではない

 フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、科学者の見解を盾にしているとして、野党政治家や有識者の一部から批判されている。

 哲学者のアンドレ・コントスポンヴィル(Andre Comte-Sponville)氏はラジオのインタビューで、「健康問題を絶対的価値にしないよう注意すべきだ」「医師がわれわれの問題すべてを解決できるなどと期待してはいけない」と警告した。

 ただマクロン政権も、小学校は9月まで閉鎖すべきだとの科学諮問機関の提言にもかかわらず、今月11日から国内全小学校の段階的再開に踏み切ったことで攻撃されている。

 同諮問機関のメンバーで、医師のピエールルイ・ドリュエ(Pierre-Louis Druais)氏は、マクロン氏の決定は「そんなに衝撃的ではない」と言う。ドリュエ氏はAFPに「われわれは一般的な方向を決めるが、社会が科学者だけで運営されていたら、あまり健全とはいえないだろう」と語った。

 救急医で妻が仏政府の副大臣であるマティアス・バルゴン(Mathias Wargon)氏は、新型コロナウイルスに関しては分からないことが無数にあり、専門家の間でも意見は割れていると指摘する。

 これが、フランス、イタリア、スペイン、米国など新型コロナウイルスが大流行した国の多くが、公開されている多数の報告書や研究論文の取捨選択のために特別諮問機関を設置している理由の一つだ。

 米国の新型コロナウイルス対策チームは、定例記者会見をドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が占領しているという点で異例だ。

 トランプ氏は、対策チームの一員として高く評価されている米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長や、デボラ・バークス(Deborah Birx)氏らと、とりわけロックダウン緩和をめぐり、あからさまに対立している。

 ファウチ、バークスの両氏は例えば学校やスポーツイベントの再開には、より厳しい規制を維持することを求めている。一方トランプ氏は、ロックダウンに抗議する人々を支持している。(c)AFP/Paul RICARD