【4月20日 東方新報】中国は文化財の研究や展示を一帯一路(Belt and Road)沿線国家で展開し、国際的影響力を拡大していこうとしている。一帯一路沿線国家の有名博物館で中国文化財を展示するほか、遺跡の共同発掘研究を強化し、無形文化財芸術の市場を開拓することによって、中国の文化的影響力を国際社会に浸透させようという。
 
 中でも注目を浴びているのが、中国とモンゴルの協力による「草原シルクロード」国家としての取り組みだ。内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)文物局によれば、過去1年、草原シルクロード沿線国家で、内モンゴルのえりすぐりの文化財の展示を行ったほか、草原シルクロード文化遺産デジタル化工程プロジェクトを推進。中国と内モンゴルの考古調査と発掘および「万里の茶の道」モンゴル国境内線ルートの調査などを展開しているという。 

 具体的には内モンゴル博物院(Inner Mongolia Museum)の所蔵品が出品された「大遼契丹―中国内モンゴル遼代文物精品展」がモンゴル国家博物館で開かれ、モンゴル各界で大好評を博した。フルンボイル民族博物院の「多彩草原―フルンボイル民族文物展」は長崎でも展示され、好評を得ている。 

 また、共同遺跡発掘研究も成果があがっている。2019年は、古代遊牧民族遺跡研究や考古中国-河套地区古代集落社会研究、陰山北麓新石器早期考古学文化研究に取り組み、遼上京遺跡、ドロンノール県(Duolun County)黄土坑遼代遺跡などの共同発掘研究を行ってきた。300以上の重要な岩石画の収集整理も完成させている。 

 敦煌(Dunhuang)などのシルクロード遺跡で知られる甘粛省(Gansu)も過去5年間、甘粛文化の対外進出に力を入れてきた。甘粛社会科学院文化研究所の海敬(Hai Jing)研究員によれば、舞踊劇「シルクロード花雨」「大夢敦煌」の海外公演を展開しているほか、無形文化財展、敦煌芸術大展、デジタル文物展などの海外巡回を行ってきた。甘南タンカや慶陽皮影(伝統影絵)、平涼切紙、崆峒武術といった無形文化財の海外市場を開拓。甘粛省として対外的に行った文化交流イベントプロジェクトは338項目に及び、そのうち、相手国に出かけていって行った交流は309項目だった。 

 さらに、敦煌文化博覧会を開催し、甘粛はタジキスタン、ベラルーシなどの国家と国際機関で、観光、文化、教育などの18の協力プロジェクトに調印した。シルクロード国際観光デー、蘭州国際マラソンなどの国際イベントを増やした。この数年はハイテク化が進み、ネットを通じた体験、デジタル展示、スマートフォンアプリを通じた文化輸出も可能となった。例えば「デジタル敦煌」によって、敦煌石窟を近距離で疑似体験することも。「デジタル敦煌」英文版では、10の王朝時代の30の洞窟をネット上で世界の人々がリアル体験できる。 

 中国伝統の中医学の認知度を海外で高める文化教育プロジェクトも展開しており、一帯一路沿線国に「中医ブーム」を起こしている。海外の中医愛好者が甘粛にやってきて学び、ロシアやハンガリー、米国に中医薬産品などを販売したり生産拠点をつくったりしているという。 

 元中国国家博物館(National Museum of China)館長の呂章申(Lv Zhangshen)氏はかつてメディア上で、文化財や博物館分野での対外交流する場合、最も優れた文化財、特に中華の優秀な伝統文化を体現する物語性をもった代表的文物を海外に持っていくことが重要だとしている。出し惜しみせずに。中国国家の最高の伝統的文化ソフトパワーを対外的に打ち出すことで、国際社会でより強い発信力、影響力を持つことができるだろう。(c)東方新報/AFPBB News