【2月26日 AFP】米メキシコ国境で約10年前に起きた、米国境警備隊員がメキシコ側にいた少年グループに発砲し、10代のメキシコ人少年1人が死亡した事件で、米最高裁は25日、遺族の訴権を認めず、警備隊員への刑事免責の付与を妥当と判断した。

 保守派が過半数を占める米最高裁は、5対4で米国境警備隊員の刑事免責を認めた。

 事件は2010年6月7日、米側のテキサス州エルパソ(El Paso)とメキシコ側のシウダフアレス(Ciudad Juarez)間の国境付近で発生した。米側にいた米国境警備隊のヘスス・メサ(Jesus Mesa)隊員が、メキシコ側にいた少年グループに発砲。友人3人と一緒にいたセルジオ・エルナンデス(Sergio Hernandez)君(当時15歳)が死亡した。

 遺族によると、エルナンデス君たちは国境線のフェンスに触ったり走り回ったりして遊んでいた。エルナンデス君が撃たれたのは、メキシコ側に18メートルほど入った地点だった。

 このためメキシコ人がメキシコ領内で死亡した場合に米国法は適用できないとする裁判管轄を根拠に、メサ隊員に刑事免責が付与された。

 この事件は一度、2017年にメキシコ政府の支援を受けた遺族によって米最高裁まで持ち込まれている。しかし、最高裁はニューオーリンズ(New Orleans)の連邦控訴裁に審理を差し戻した。控訴裁では国境警備隊員の免責を支持したが、別の裁判所が扱った過去の同様の事件の判決と食い違っていたため再度、最高裁が扱うこととなった。

 対移民強硬姿勢を貫いているドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権は、重要な国家安全保障機能が損なわれかねないとして最高裁に対し、国境警備隊員の免責を保証するよう要請していた。

 これに最高裁判事のうち保守派5人は賛成したが、リベラル派4人は反対。ルース・ベイダー・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)最高裁判事は反対意見の中で、「実際には(国境警備隊員の)起訴によって、米国の外交政策も安全保障も危険にさらされることはない」「被弾した瞬間にエルナンデス君がいた場所がどこかは全く問題ではない」と述べた。(c)AFP