■女性の生殖の権利に関する法律が進歩的なロシア

 ロシアの現人口は1億4600万人だが、2035年までに400万人から1200万人の減少が予測されている。現在20代の若者たちは、不景気で出生率が大幅に低下した世代であるため、親になる人数もそれだけ少ない。人口は、昨年の1月から10月までの間に26万人近く減少し、過去11年間で最も著しい下げ幅を記録した。

 プーチン大統領は今年の1月、女性1人当たりの出生率を、現在の1.5人から2024年までに1.7人に上昇させると訴えた。不妊治療はこの戦略の一環だ。

 保健省によると、公的保障によるIVF処置の件数は、2016年の年間4万6000件から2018年の年間7万8000件に上昇した。目標は2024年までに9万件にすることだ。 

 女性の生殖の権利に関するロシアの法律は非常に進歩的だ。生殖補助に対する年齢制限もなく、独身女性や未婚のカップルにも門戸が開かれている。通常は保守的なロシア正教会でさえ、異議を唱えることはほとんどない。

 教会関係の専門家ローマン・ランキン(Roman Lunkin)氏は、「ロシアはいまだに欧州でも中絶率が最も高い国の一つで、(ロシア)正教会にとっても大きな問題だ」と指摘する。

 ロシア保健省によると、人工妊娠中絶の年間件数は2010年の150万件から2018年の56万7000件に激減したが、年間出生数約160万人と照らし合わせると、この中絶件数は、今なお無視できない大きな数字だ。(c)AFP/Romain COLAS