■中国メディアが語らないこと

 一方、中国メディアでは、平和的なデモに参加している何万もの人々が口にしている不満はほとんど報じられない。

 デモ参加者らの懸念は、1997年に英国から中国に香港が返還された際の法律によって香港に付与された特別な自由が、中国政府によって侵食されているという点に集中している。

 中国国営テレビはそうしたデモ参加者らの不満を無視する一方で、デモがもたらした日常生活の不便さを訴える香港市民の苦情は伝えている。

 中国共産党はメディアを通じて自国民に、香港のデモを模倣しないよう警告しようとしていると指摘するのは、フランス国立社会科学高等研究院(School of Advanced Studies in the Social Sciences in Social Sciences)の中国専門家、ミシェル・ボナン(Michel Bonnin)氏だ。

「中国政府にとって最も重要なのは、(デモが)波及する可能性を排除することだ」と指摘する。「だから(香港の)状況を可能な限り隠していた。それがもはや不可能となると、抗議運動を邪悪に描き、単なる外国の敵対勢力に操られた分離独立派の暴徒だとみせようとしている」

 人民日報系の環球時報(Global Times)は、混乱を収めるためには死者が出ることも想定した武力行使が必要だとし、「法を執行中の警官に対する攻撃や威嚇は、直ちに射殺されるなど、あらゆる種類の法的リスクに直面すべきだ」と主張する。

 さらに中国国営メディアは、軍による介入の可能性もちらつかせている。同じく環球時報は「暴徒らが破壊を尽くしている一帯は、深セン武装警察部隊(Shenzhen Armed Police Force)の最寄りの拠点から車ですぐの距離にあり、また人民解放軍(PLA)の香港駐屯地にはもっと近い」と記している。(c)AFP/Patrick BAERT