■元所有者自身の寄付

 アルナマグネア・コレクションは、歴史学者で文学と言語学の専門家でもあったアウルトニ・マグヌッソン(Arni Magnusson)にちなんで名付けられた。アイスランドに生まれたマグヌッソンは、1730年にコペンハーゲンで死去した際、自身が所有していた写本約3000点をコペンハーゲン大学に遺贈した。

 独立後のアイスランドはコレクションの返還を繰り返し要請。1960年代には、元植民地との関係を良好に保ちたいデンマークが一部返還に応じることになった。そして1965年に結ばれた条約に基づき、1971年~1997年の間に半数以上の写本がアイスランドに返還された。

 その後長らく、これらの文書を両国で分割保有することは問題視されてこなかったが、ここへ来てアイスランドのリリア・アルフレズドッティル(Lilja Alfredsdottir)教育・文化相が、さらに多くの写本の返還を求めている。

 アルフレズドッティル氏はこの問題の注目度を高め、マグヌッソン研究を専門とする新施設の建設に結び付けて語っている。この施設では、数々の中世の文書を展示する予定だ。同氏はAFPの取材に対し「なるべく多くの写本がアイスランドで保管されることが重要だと考えている」と話した。

 一方、コペンハーゲン大学で写本を管理するマシュー・ドリスコル(Matthew Driscoll)教授はさらなる返還に反対し、残りの写本はデンマークの文化財だと主張している。

 ドリスコル氏は、大学はすべての写本をデジタル化し研究者が利用できるようにするなど、アイスランド政府と緊密に協力してきたと話す。

 同氏は「これらの写本は、違法に入手されたり、盗まれたりしたものではない…アウルトニ自身がもらったり買ったりして所有し、完全に合法な手続きをもって、彼がコペンハーゲン大学に寄贈したものだ」と語った。

 映像はコペンハーゲン大学で管理されている写本と、写本を見せるドリスコル氏。10月1、15日撮影。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT with Jeremie RICHARD in Reykjavik