【8月30日 AFP】米環境保護局(EPA)は29日、石油・天然ガスの掘削井やパイプラインから漏出するメタンガスの排出規制を緩和する方針を発表した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の大統領令に沿った措置だという。ただ、メタンは地球温暖化の原因となるため、エネルギー大手各社は現行規制の維持を求めている。

 トランプ大統領は環境保護を目的とした連邦規制を相次いで撤廃・後退させており、今月初めには、野生動物保護法を緩和して「シアン化物爆弾」の通称で知られる毒物を使ったわなの使用再開を許可している。

 今回のメタンガス排出規制緩和について、石炭業界のロビイスト出身のアンドリュー・ウィーラー(Andrew Wheeler)長官は「トランプ大統領の大統領令に沿った方針だ。重複した不要な規制による負担を、石油・ガス業界から取り除く」と説明。「トランプ政権はメタンの価値を認識している。業界には、漏出を最小限にしつつメタンを最大限に活用する意欲がある」と述べた。

 規制緩和方針は、パブリックコメント期間を経て来年にも適用される見通し。パブリックコメントには政府に対する法的拘束力はない。

 EPAでは、規制緩和によって石油・ガス業界は年間1700万~1900万ドル(約18億~20億円)のコスト削減が可能になると主張。2025年までに最大1億2300万ドル(約130億円)の節約につながるとしている。

 しかし、英BP、米エクソンモービル(ExxonMobil)、オランダのロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)などエネルギー大手各社は、バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領が導入した現行規制の維持を求めている。シェル米国法人のグレッチェン・ワトキンス(Gretchen Watkins)社長は29日、「政権がメタン規制を撤廃する方針を発表したが、シェル米国法人は今後も国際的な規制値への貢献を続ける」との声明を発表し、2025年までに漏出を0.2%未満に抑えると約束した。

 業界内の異論について問われたEPA当局者は、「業界には中小企業もいる」と答えた。(c)AFP