【7月29日 東方新報】中国はこのほど、「健康中国行動(2019-2030年)」を打ち出し、全国民に向けて疾病予防と健康促進の二つを軸とした行動規範を示した。健康知識を普及させ、個人が心身の健康を定期的に記録する習慣を身につけ、医薬への理解や基本的な救急知識と技術を習得するよう促進するのが狙いで、そのためには、大学入試に健康状況を反映することも提唱されている。

「健康中国行動」では、減塩、減油、減糖といった食生活の改善とともに、適度な運動を生活に取り入れることが推奨された。毎週3回以上、30分以上の中強度の運動、あるいは累計150分の中強度か75分の高強度の身体活動を行い、日常生活では毎日6000~1万歩歩くことを理想とした。

 こうした運動習慣の普及のため、地域の公共施設を無料あるいは低料金で開放することを推進し、また市民同士で「15分健康サークル」などつくるよう提唱。大学受験などに健康状態を評価の対象に入れるようにも提言した。さらに2022年と2030年に、農村地域で「国民体質測定基準」を上回る人数をそれぞれ90.86%以上、92.17%以上、日常的に運動習慣を取り入れる人口比をそれぞれ37%以上、40%以上にするという目標値を設定した。

 体だけでなく、精神の健康にも注視し、うつ病などの知識の普及や科学的なストレスの緩和法などについて提示された。中国ではうつ病罹患(りかん)率は2.1%、不安障害の罹患率は4.98%に上り、全国で深刻な精神疾患患者の登録数は581万人に上っている。

 長期の睡眠不足が、心臓や脳の血管疾患やうつ病、糖尿病、肥満、認知機能の低下などのリスクを増大させることが最近の研究でわかっており、「睡眠の国家基準」として「成人の1日の平均睡眠時間を2022年から2030年の間に7~8時間に引き上げる」という目標も打ち出された。

 小中学校については、健康促進行動を取り、児童・生徒向けの健康・救急知識の普及が打ち出された。特に心肺蘇生技術を入試の一部に組み入れるなどして、児童・生徒の成績・評価に反映させるよう指示されている。また、中学生、小学生の近視率がそれぞれ71.6%、36%で推計1億人の近視の児童・生徒がいる現状を緩和するために、夜間の学習には必ず部屋で明かりをつけて卓上スタンドを使用することや、連続40分を超えての読み書きを控えることも提唱されている。

 60歳以上人口が2億4900万人を超え、うち4000万人が心身機能の一部を失っている現状については、社区と呼ばれる居住区単位や組織で、高齢者の心身ケアを行える専門家やカウンセラー養成の研修への取り組みなどが提案された。

 中国では、毎年新たにがんの発症が380万例前後あり、がんによる死亡も229万例ある。この死亡率を抑制するために、地域ごとにがんの流行、発生状況について調査し、早期発見に向けた診療基準モデルなどを確立するよう求められた。

 中国では、食生活の急激な変化や環境汚染、ストレス増加などの影響で、心臓・脳血管疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病の四大慢性疾患による死者がすでに全死亡者数の88%を占めている。一方で、医療機関の数も健康保険制度の普及も十分ではなく、病気になっても医療そのものを受けられない層はまだまだ多い。中国人の健康指導は、経済社会の安定のために中国政府にとって喫緊の課題となっている。 (c)東方新報/AFPBB News