■心理学者とソーシャルワーカーの数が足りない

 4月20日に公表された調査結果によると、子どもの頃に性的虐待を受けたことがあると回答したグリーンランド人は1995年以降生まれでは20%だが、1975~79年に生まれた人ではその倍以上となる43%に達している。

 だが、虐待事例を当局に報告する人々が徐々に増え始め、「沈黙の共謀」による閉塞(へいそく)状況を打ち破ろうとする動きが起きている。

 2018年の性的虐待の被害件数は436件で、前年を50件上回り、届け出たうちの20%が未成年者だった。この件数は、グリーンランド住民1000人当たり8件に相当する。ちなみに、デンマークの他の地域では1.1件だ。

 グリーンランドにおける経済面と社会面の政策を担っているヌーク(Nuuk)の自治政府は、2022年までに児童性的虐待を撲滅する目標を掲げ、特に、子どもの権利と、体の不可侵性の尊重について啓発する広報キャンペーンの展開を予定している。

 自治政府は当事者全員の支援についても約束しているが、実現するには虐待の発生件数が多い地方都市へのソーシャルワーカーの派遣が必要になってくる。

 だが、国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・グリーンランド(from Save the Children Greenland)のヨンナ・ケトワ(Jonna Ketwa)代表はAFPに、被害者やその家族をケアする心理学者とソーシャルワーカーの数が足りないと指摘。虐待者に対する治療となると、なおさら専門家の数が不足していると話した。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT