■星条旗

 午後11時15分:アームストロング氏が月面に降り立ってからすでに19分が経過した。その間、無機質な星で、えも言われぬ孤独の中にあったが、船長は驚くほど落ち着いた様子だった。

 オルドリン氏が姿を見せた。先ほどのアームストロング氏を見て安心したのか、大胆にはしごからジャンプし、アームストロング氏と同じく左足から月面に着地した。

 2人の飛行士は、月に星条旗を立てて愛国心を示した。そして、月着陸船の脚部に固定してあった銘板に書かれていた言葉をはっきりと読み上げた。「地球から来た人類がここに初めて足跡をしるす。西暦1969年7月。すべての人類のため、われわれは平和のうちに来た」

 この象徴的な行動の後、2人は月着陸船に固定してあったカメラを動かした。カメラは月の白い地表と傾斜した地平線、そして背後の漆黒の闇を映し続けていた。

 アームストロング氏は、まずカメラを首に引っ掛けた。地球上のテレビ画面が一斉に揺れた。そして船長は何歩か歩き、それを三脚に固定した。

 地球にパノラマ映像が届いた。月着陸船の背後には、無数の小さなクレーターと大きな影、遠くには太陽の光に照らされてきらきらと輝く月の輪郭と宇宙の底知れぬ闇が広がっていた。

 画像がより鮮明になった。視聴者は、灰色がかった白い地表に残された飛行士らの足跡としっかりと固定された星条旗を確認できた。

 2人の飛行士は、ダンスでもしているかのように軽やかな足取りで歩いた。月の上で奇妙なバレエでも踊っているかのようだった。重い宇宙服―─つなぎ目が補強され、生命維持装置を背負っているせいでたるんだ耐火性のよろい─―は、まったく気にならないようだった。<パート2に続く> (c)AFP