【6月21日 AFP】地中海の仏領コルシカ(Corsica)島北部の森の中で、2人の野生生物保護官がかごを開けて、黄褐色のしま模様の動物を見せた。この地域に生息する16匹の「キツネネコ(コルシカ語でGhjattu volpe)」の1匹で、当局らは新種の動物だと主張している。

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 フランス国立狩猟・野生動物事務局(ONCFS)の主任環境専門家、ピエール・ベネデッティ(Pierre Benedetti)氏は「われわれは、この動物は夜行性で、人間が目にすることがほとんどないため、既知ではあるが科学的に認識されていない野生種であると信じている」と話す。

 尾に輪状の模様があるこのネコ科の動物は、いくつかの点でイエネコに似ているが、体長が90センチあり、「非常に大きな」耳と短いひげ、「高度に発達した」犬歯を持っている。その他の際立った特徴としては、前脚のしま模様と「非常に濃い色」の後脚、アズキ色の腹部が挙げられる。柔らかく濃い毛はノミやダニ、シラミを防ぐ天然の虫除けの役目を果たしている。尻尾には通常2個から4個の輪があり、先端は黒い。

 ベネデッティ氏は「体の大きさと尻尾から、島ではキツネネコという名前で呼ばれている」と語った。

 ONCFSのキツネネコ担当カルルアントン・スッシーニ(Carlu-Antone Cecchini)氏によると、キツネネコの主な捕食者はイヌワシだという。ONCFSは2016年以降、同地域で目撃された「キツネネコ」16匹のうち12匹を捕獲したが、短時間の検査の後、すぐに放している。

■何世代も語り継がれる神話

 スッシーニ氏は「キツネネコは当地の羊飼いが語り伝えてきた神話の一部だ。何世代にもわたり、森のネコたちがどのようにしてヒツジやヤギの乳房をめがけて襲ってきたかも伝えられてきた」と語った。

 何年もネコとネズミのような追いかけっこを続けた後、2008年に1匹のキツネネコが鶏舎の中で偶然捕獲された。

 2012年にはネコを引き付ける香りをつけた木製の棒を用意し、縄張りを示すためのしるしとして体をこすりつけて毛が残るようにしたことで調査が進み、遺伝子の構成の解明が可能になった。

 ベネデッティ氏は「DNAを見れば、ヨーロッパヤマネコとは異なると言える。近いのはリビアヤマネコだが、まだ厳密な判定には至っていない」と指摘する。

 その食生と繁殖パターンについては今後の研究を待つことになるが、ベネデッティ氏はキツネネコは紀元前6500年に農耕民らによりコルシカに持ち込まれた可能性があると主張している。「もしこの仮説が正しければ、その起源は中東だ」

 AFPの記者に見せられたキツネネコの首には識別チップが着けられており、4歳から6歳の雄と記されていた。このキツネネコは以前にも何度か捕らえられており、別の雄との争いで片目を負傷している。(c)AFP/Maureen COFFLARD