■「イマーム100人を派遣する」


 ロンドン橋襲撃事件では翌日、現場に所属不詳のワゴン車に乗った男性の一団が現れた。男性たちは警察が張った規制線の内側に入り、壁にポスターを張り始めた。ポスターには、ロンドンの写真と、すでにツイッター上で拡散し始めていたハッシュタグ「#TurnToLove(愛に頼ろう)」、「#ForLondon(ロンドンのために)」、「#LoveWillWin(愛は勝つ)」があしらわれていた。

 こうした行為は英国で「フライポスティング」と呼ばれ軽犯罪に相当するが、警察は男性らを規制線内に迎え入れ、何の対処もしなかった。男性らは記者たちに、自分たちが何者で、どこから来たのかを明かすことを拒否。規制線が最終的に取り除かれ、記者らが現場への立ち入りを許可されると、そこには即席で作られたように見えるポスターがあちこちに貼られ、抵抗と連帯を訴えていた。

 その翌日、現場地域を管轄するサザーク(Southwark)区議会に、ある政府関係者から電話があった。議会職員によると、その人物は「イマーム(イスラム教指導者)100人をそちらに派遣する」と告げたという。2日後、約100人のイマームらイスラム教指導者が英国全土からロンドン橋を訪れ、うち1人が事件を非難する声明を読み上げた。

 その週末、イスラム教徒のグループがロンドン橋を訪れ、数千本の赤いバラを通行人に手渡した。企画者の一人である女性は、事件に影響を受けた人々に対する「愛を示す行為」だと説明した。

 しかし女性はこの時、自分が内務省の捜査機関で勤務していることは明かさなかった。

 女性はMEEに対し、この活動は完全な「草の根」運動であり、政府からの支援は一切受けていないと説明。「地域社会の一員として行動したもので、私の個人的なネットワークに協力を求めた」と語った。

 このように、従来型の緊急対策(警察、医療、病院の対応)と事件後のプロパガンダ活用を融合させる取り組みは、近年の英国で勢いを増しているもようだ。

By Ian Cobain


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