■「コーヒー農園売ります」の広告に震え上がる地元

 だがサントゥアリオでは、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)の事務所に掲示された「コーヒー農園売ります」という広告に、地元生産者らは震え上がっている。

 経営を続けるため、エチェベリさんのように観光客に農場を開放した経営者もいる。

 コロンビアで半世紀にわたって続いた内戦で、大勢の住民がこの山岳地帯を去った。サントゥアリオの首長、エベラルド・オチョア(Everardo Ochoa)氏は、コーヒー栽培が危機に陥るたびに人口が流出すると嘆く。

 2016年、コーヒーの国際基準価格は、1ポンド(約450グラム)当たり1.5ドル(約162円)から1ドル(約108円)未満に急落。史上最も大きい下げ幅を記録した。

 国際コーヒー機関(ICO)によると、2018~2019年のコーヒー豆の生産量は、1袋60キロで換算した場合、1億6700万袋になる見通しで、世界全体の消費量1億6500万袋を上回る。

 サントゥアリオでコーヒー豆の栽培が今も行われている唯一の理由は、多くの生産者たちにとっては「コーヒーが体の一部になっている」ためで、他にできることがないからだとエチェベリさんは話す。

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は、「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観(Coffee Cultural Landscape of Colombia)」を世界遺産として登録しているが、ここで栽培されているコーヒーの木は減少する一方だ。