■薬を減らす

 転倒に関しては、オランダ、スペイン、オーストラリア、カナダなどでも最近、調査が行われており、2000年以降に関しては米国と同様の傾向が示されている。フランスでは、この問題を「深刻な公衆衛生問題」の一つと位置づけている。

 転倒が急増した理由についてはまだ十分に調べられていないが、老年性疾患の専門家らはいくつか見当を付けている。

 そのうちの一つは、今日の高齢者らが以前よりも活動的になっていると考えられることだ。また、筋肉の衰えと関連する肥満の度合いが増したことも、転倒増加の一因となっているかもしれない。

 そして、恐らく何よりも大きいのは、現代医学が慢性疾患治療の向上において大きな役目を果たしてきた一方で、老齢期の生活の「質」については、ないがしろにしてきたということかもしれない。

 こう指摘するのは、米首都ワシントンにあるメドスターワシントン病院センター(MedStar Washington Hospital Center)の訪問診療プログラムを統括する老年医学者のジョージ・テイラー(George Taler)氏だ。

 テイラー氏が最も支持する、転倒リスクを低下させる方法の一つはシンプルだ。もはや必要ではない薬を減らす「減処方(de-prescribing)」だという。

 毎日服用する処方薬の数が4種以上の場合、方向感覚や平衡感覚の喪失が著しく増すことが、複数の研究で示されている。

 また、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)などの研究チームがJAMAに発表した別の研究では、運動が転倒の低減に寄与することが明らかになった。

 テイラー氏は、「運動は、人々に自らの体や周囲の空間をより意識させ、より自信を持たせる」と説明し、「その効果を測定することはできないかもしれない。それでも転倒に関しては、目に見えるほどの効果がある」と指摘している。(c)AFP/Ivan Couronne