■「すべてが北方に」

 ヨンカーズ氏はこの記録を利用して、1978年~2013年に収集されたサンプルと、数百年前の海底堆積物との比較調査を行った。その結果、現代のプランクトン群集と同じエリアのより深い地点にある堆積物中に確認されたプランクトン群集との間には、類似性がほぼ見られないケースが多いことが分かった。

 現代のプランクトン群集と類似するものが見られたのは、より南方の海域の堆積物の中だった。これは、北方の海域の海水温が、プランクトン種の当初の生息地の水温により近くなるのに伴い、そのプランクトン種が北方に移動してきたことを示唆するものだ。

 ヨンカーズ氏は、「すべてが北方へと移動していた」と説明する。

「ある場所では常に多くの異なる種類のプランクトンが見つかるが、このプランクトン群集はより水温の高い海域を好むさまざまな種で構成されていることが、今回の研究で確認されている」

 例えば、デンマーク領グリーンランド(Greenland)付近にみられる現代のプランクトンの種類は、もっと南方にある産業革命前の時代の堆積物に含まれるプランクトンと同じだ。

 今回の研究では、北半球全体の広い範囲から収集された約4000件のサンプルを調査した。

 この調査についてヨンカーズ氏は、「水温の変化が大きい場所ほど、プランクトンの種類が大きく変化している」と述べ、対象地点における変化の傾向は明確だと指摘している。

 同氏によると現在のところ、種の絶滅を示す証拠は存在しないという。だが、移動によって新たな環境に到達し、他のプランクトン種の間でも生き残れるよう速やかに順応できないと、プランクトンとそれらを餌とする動物に問題が生じることも考えられるとしている。(c)AFP/Sara HUSSEIN