【5月9日 AFP】世界最長級の河川のほぼ3分の2がダム、貯水池など人工建造物によって分断されているとの研究結果が8日、発表された。これにより、地球上で最も重要な生態系の一部に深刻な被害が生じているという。

 国際研究チームは、最新の衛星データとモデル化ソフトウエアを用いて1200万キロに及ぶ世界の河川の連結性を調べ、河川に対する人的影響を世界で初めて評価した。

 その結果、全長1000キロを超える91本の河川のうち、水源から海まで直接的な連結性を保っているものは21本しかないことが明らかになった。

 さらに、最長級河川242本のうち自由な流れが保持されているのは、全体の3分の1をわずかに上回る37%にとどまった。このことが生物多様性に計り知れない影響を与えていると、専門家らは指摘している。

 8日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の筆頭執筆者で、カナダ・マギル大学(McGill University)地理学部のガンサー・グリル(Gunther Grill)氏は「世界の河川は、陸地、地下水、大気などと極めて重要なつながりを持つ複雑なネットワークを形成している」と話す。

「自由に流れる河川は、人間にとっても環境にとっても同様に重要だが、世界的な経済発展により、ますます希少となっている」

 自由な流れを保持している河川の大半は、北極圏、アマゾン川(Amazon River)やコンゴ川(Congo River)の流域などの遠隔地に限られていることも明らかになっている。

 今回の研究は、人的活動が河川にいかに多大な影響を与えているかという詳細を浮き彫りにした。

 現在、世界に存在する280万基のダムのうち、河川を分断している高さ15メートル以上の大型ダムは全部で6万基に達すると推定されている。

 河川を分断し、せき止めると、農業によって失われる栄養物を補うために必要不可欠な流れが途絶される他、河川でライフサイクルを完結させる生物の総個体数が減少する。