■シベリアのデニソワ人になぜ低酸素症を防ぐ遺伝子変異が?

 顎骨の発見はさらに、人類学者を何年も悩ませてきた謎への答えを示している。

 研究者らは2015年、高地に住むチベット人と漢人には、血液に酸素を行き渡らせるヘモグロビンの生成量を調整する遺伝子「EPAS1」に変異がみられることを発見した。

 チベット人から見つかった変異は、ヘモグロビンと赤血球の生成量を大幅に抑制し、標高4000メートルを超える高地に行ったときに多くの人が経験する低酸素症の問題を防いでいる。この変異は、標高700メートル未満のシベリアで発見されたデニソワ人のDNAで見つかったものとほぼ同じだった。

 ユブラン氏は、その理由は誰にもつかめていなかったとして、「デニソワ人が高地に住んでいたことは知られていなかったため、この遺伝子(EPAS1)は彼らの生存にとっては不要だ(と考えられていた)からだ」と説明し、こう続けた。

「だが今、その理由が分かった。このDNAは(シベリアの)デニソワ人のものではなく、チベットのデニソワ人のものだったのだ」 (c)AFP/Patrick GALEY