【3月10日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が就任した時、最初に取った行動の一つはホワイトハウス(White House)のウェブサイトからスペイン語ページをなくすことだった。

 それから2年以上が過ぎ、トランプ大統領が中米からの移民の流れを断ち切るための国境の壁の建設予算をめぐって議会とやり合う中、スペイン語の使用に関する憂慮すべき事件も増加傾向にある。

 昨年5月には、弁護士がニューヨーク・マンハッタン(Manhattan)の店でスペイン語を話す店員に腹を立て、移民当局に通報するぞと脅迫する事件が起きた。同月、スペイン語で会話していたという理由で米国人女性2人が国境警備隊に拘束される事件も起きた。

 スペイン語が米国の生活の中でますます当たり前のものとなっているにもかかわらず、こうした不寛容な行動が見られるのは、米国で政治の二極化が進んでいる証拠だ。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)によると、米国にはスペイン語が母語だという人が4100万人以上暮らしている。ヒスパニック系は人口の17%を占め、主要な少数派集団となっている。

 気がかりなことに、同センターが昨年10月に公表した調査結果によると、過去1年間に公共の場でスペイン語を話すといった自身の生い立ちなどに関連する理由で嫌がらせを受けたと回答した中南米系住民の割合は、約40%に上った。

 スペイン語は米国で昔から使われてきたが、19世紀半ばにメキシコから割譲された西部で特によく話されてきた。年月を重ねる中で使うのをやめた家族もいるが、絶え間ない移民の流入と中南米に近い地理的な条件のおかげで、依然として大きな勢力を持っている。

 カリフォルニア州立大学(California State University)のマリア・カレイラ(Maria Carreira)教授(スペイン語)は、こうした事件を社会的差別に当たると考えている。

 カレイラ教授は、米社会の至る所で話されているにもかかわらず、スペイン語はフランス語やイタリア語と違い、しばしば2級言語とみなされていると指摘。「スペイン語は『浅黒い肌の』人々を連想させる」「女性の清掃作業員や庭師、ベビーシッターの言語とみなされている」と説明した。

 米国自由人権協会(American Civil Liberties Union)のコーディー・ウォフシ(Cody Wofsy)弁護士は、「米国に公用語など存在しない。国民がどんな言語だろうと好きな言語で話すことは、権利の範囲内だ。米国ではものすごい数の言語が話されている」と指摘している。(c)AFP/Laura BONILLA