■プーチン氏も支持

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2017年末、カディロフ氏を支持し、子どもたちを帰国させる取り組みは「尊敬に値する正しい行いだ」とし、支援を約束した。

 プーチン氏は、ロシアがシリアへの軍事介入を開始した2015年当時は、IS戦闘員がロシアに戻って来る前に殺す必要があると介入を正当化していた。

 ロシアの一部地域では、IS戦闘員のための更生プログラムが実施されているが、全国的に広がることはなかった。シリアやイラクから帰国した若者が出頭すると、厳しい刑罰が科せられる。

 ロシア最高裁判所は今月、19歳の学生だった時にシリアに渡り、IS支配地域で6か月間、調理師や運転手として働いた経験がある若者に対し、16年の実刑判決を言い渡した。

■守られない恩赦の約束

 ロシアとイラクの間に身柄引き渡し協定がないことも、IS戦闘員の妻たちの帰国を難しくしている理由の一つに挙げられる。妻たちはイラクで実刑判決を受け、終身刑を言い渡されることもあるという。

 だが、巨大な権限を持つロシアの治安当局は、成人に達したロシア人が帰国することに消極的だ。

 連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ(Alexander Bortnikov)長官は昨年11月、紛争地帯にいる女性とその子どもの多くは、ISによって自爆テロの実行犯や勧誘員として利用されていると指摘した。

「妻たちの多くが、クルド人から自由を買い、最終的には何らかの方法で帰国することになると予測しており、FSBは彼らを危険な存在と見なしている」

 ISはロシアの法律で違法団体とされており、ISとのいかなる関係も犯罪と見なされる。

 カフカス地方に特化したニュースサイト「コーカシアン・ノット(Caucasian Knot)」のグリゴリー・シュベドフ(Grigory Shvedov)氏は、「恩赦のようなものを約束される人も多いが、実現することはない」「彼らは裁判にかけられるが、罪状はでっち上げのことも、事実のこともある」と指摘する。

 昨年シリアから故郷のダゲスタン(Dagestan)共和国に戻った女性2人は、帰国後すぐに禁錮8年の有罪判決を受けた。だが、裁判所は最終的に、子どもたちが大きくなるまで刑の執行を猶予する決定を下している。

 一方、「カリフ制国家」で育った子どもは、なじみの薄いロシアでの生活に慣れるのに苦労している。

 ロシア当局は、子どもたちを親戚の手に委ねることで、イスラム過激派が古くから存在するカフカス地方でも、子どもたちが成長した時に過激派になる危険を最小限に抑えることができると期待している。(c)AFP/Maxime POPOV, Olga ROTENBERG