【3月9日 CNS】中国・貴州省(Guizhou)黔西県(Qianxi)瓦房村(Wafang)は、烏江(Wujiang)上流の六冲河(Liuchonghe)沿いに位置し、対岸の織金県(Zhijin)大坪郷(Daping)との間は絶壁に挟まれた深い峡谷になっている。交通が不便で、地元住民が村から出る時には錯界河(Cuojiehe)の船着き場まで船で渡り、そこからまた別の乗り物に乗り換えなければならない。

 瓦房村の徐明山(Xu Mingshan)さんの家は錯界河の船着き場のそばで、父の徐登志(Xu Dengzhi)さんは錯界河の渡し船の船頭をしていた。徐さんがまだ15歳だった1998年に父親から操船技術を学び始め、02年に正式に船頭として父親からかじ取りを任され、「2代目船頭」に。以来21年、船頭を続けてきた。

 交通の絶え間ない発達に伴って外出は便利になり、徐さんの仕事も以前は60キロの範囲に及んでいたが今では縮まり、船着き場付近の周辺数キロ程度だ。

 徐さんにとっては、春節(旧正月、Lunar New Year)明けが1年で最も忙しい時期だ。周辺の村々を毎日20回以上は往復し、出稼ぎに行く村民を送り迎えしている。村民が山を下りて出稼ぎに出る時にはまず徐さんの渡し船に乗るので、現地の人たちは錯界河の船着き場を「春運(春節時の帰省ラッシュ)が始まる場所」と呼ぶ。徐さんもまた、「山を出る道の船頭さん」と呼ばれている。

 徐さんは「渡し船では大して稼げないが、村の人たちにとっては便利なものなんだ。誰か1人でも船に乗る人がいる限りは、ずっとこの仕事を続けていくつもりだよ」と語る。(c)CNS/JCM/AFPBB News