■差別は当たり前

 ゲバラさんは、フェースタトゥーを入れることに反対しているわけではない。実際、自分の顔のおよそ4分1に、米国の先住民アートにインスパイアされたタトゥーを入れている。だが、スタジオを訪ねてくる人には、フェースタトゥーを入れる前に慎重に検討するよう忠告している。

「自分の顔に永久に残るものを彫るなら、よく考えてから試した方がいい」

 ゲバラさんは自分の顔にタトゥーを入れる前に数か月間、毎朝デザイン案を顔に描き込んだ。周囲がどのように反応するか観察し、そのペイントに自分自身が慣れた後、ようやく実際に彫った。

 ゲバラさんのスタジオは、未成年者の客を歓迎していない。

「将来、大勢に差別される。家を貸してくれなかったり、仕事に採用してもらえなかったりすることも多いだろう」

 フェースタトゥーはレーザーで簡単に除去できるという考えをゲバラさんは否定する。何段階もの工程を経なければならず、料金も安くなく、傷痕が残ることもあると言う。

 1976年にオープンし、ニューヨークで最も古いタトゥー店とうたうファインライン・タトゥー(Fineline Tattoo)のように、「フェースタトゥーお断り」の方針を掲げる店もある。ちなみにニューヨークでは1961年から1997年にかけ、タトゥーの施術は法律で禁止されていた。

 オーナーのメーアイ・ベケティ(Mehai Bakaty)さんは、フェースタトゥーは元来、一般社会に「見切りをつけた」ギャングの一員や受刑者のためのものだったと話す。

「(フェースタトゥーに憧れる)若者たちは夢を持たず、自分はレジ係で一生を終えると諦めている」とベケティさんは嘆く。

「最近の若いラッパーたちは、人生とはそういうものだというメッセージを伝えようとしているが、そういうのは無責任極まりないと思う」 (c)AFP/Thomas URBAIN