■不吉な予感

 荒々しいムジャヒディンの戦士と地形に守られたパンジシール州は、ソ連軍撤退後のアフガニスタンをむしばんだ暴力を免れ、ほぼ平和が保たれた。

 だがアフガニスタンは今、駐留米軍撤退の可能性が迫り、政府は内紛と不信感で分裂し、旧支配勢力タリバンが再び舞台の主役に立っており、人々は、歴史が繰り返されるのではないかと不安をかき立てられている。

 マスード氏の息子アフマド氏(29)は、メッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」を通じてAFPの取材に答え、父親がかつてソ連軍撤退後のアフガニスタンの行方を懸念していたと語った。

 アフガニスタンは国が分裂しすぎており、政府には国をまとめる力がないため、マスード氏はソ連が早急に撤退してしまうことに「不安を覚えていた」という。「父は、ソ連軍撤退がアフガニスタンを大きな混乱に陥れると懸念していた。そして、全くその通りになった」

 ミルザさんは、道路脇のソ連製戦車の残骸の上に座り、勝利が暴力の遺産を残したことを苦々しく思い返していた。「あの日は、私たちに幸福と悲しみの両方を残した」と、穏やかに語る。「米軍が撤退を決めた今、私たちは同じことが起きるのではないかと恐れている」 (c)AFP/Nick Perry