■家庭訪問で高齢者の本音聞き出す

 ボランティアらは、間もなく難題にぶつかった。高齢者は人に迷惑をかけたくないとの思いが強いせいか、「何か欲しいものは無いか?」と聞いても、「問題ない。何も困っていない」と言うだけだった。福祉施設職員とボランティアらは、高齢者の家庭になるべく多く顔を出すようにし、世間話に花を咲かせる中で、本音を聞くようにした。

 こうして、1回目の「小さな願い」がそろい、公表する準備が整った。発表された高齢者の「願い」とは、「腰かけられるつえ」「掛け布団」「電気炊飯器」「電気ポット」「瞬間湯沸かし器」などだった。これらの「小さな願い」は聞き届けられたのだろうか。

 王長松さん(73)は、この地区の古い住民だ。王さんは、いつも顔を出してくれるボランティアに少しだけ愚痴をこぼしたことがあった。夜にシャワーを浴びている時に湯沸かし器の調子が悪くなり、突然冷たい水が出て寒い思いをしたと話をした。

 ある夜、王さんは突然、ボランティアからの電話を受けた。これから訪ねてくるという。程なくして、オレンジ色のベストを着た人ら、がリヤカーに大きな段ボールの箱を積んでやって来た。QRコードをスキャンして「小さな願い」を聞き入れた地元住民の一家が、湯沸かし器を配達しに来たのだった。

■多様化する「小さな願い」

「小さな願い」の活動は、今後も続く。次回は、春節明けに発表されるという。ボランティアの侯さんは、「これまでの聞き取り活動で、高齢者の『願い』は物質的なもののほかに、風呂に入れてほしいとか、掃除を手伝ってほしいといった『願い』があることが分かってきたので、今後は形を変えて多様化していくだろう」と語った。(c)東方新報/AFPBB News