■拠点まで数百キロ

 シリア専門家のファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏も、ISはトルコから400キロ以上離れたシリア東部ブカマル(Boukamal)周辺を拠点にしていると述べ、トルコ軍がそこまで到達するのは不可能との見方を示す。米軍の撤収後は、シリア政府軍とイラクのイスラム教シーア派(Shiite)系武装勢力が対応すると予想する。

 バランシュ氏はさらに、トルコはシリア北部イドリブ(Idlib)県のトルコ国境地帯から反体制派の過激派組織「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」(元アルヌスラ戦線)を掃討することすらできていないと指摘。「アラブ勢力の助けを借りるにしても、どのようにISを打倒するのか検討がつかない」と言う。

 バランシュ氏は、トルコにできるのはせいぜい、シリアとの国境を閉鎖してISの移動や輸送の経路を遮断したり、2016年にシリア北部アルバブ(Al-Bab)で行ったような標的を絞った作戦を実行したりして、ISの復活を防ぐことくらいだろうとみる。

 トルコのシンクタンク、経済外交政策研究所(EDAM)のシナン・ユルゲン(Sinan Ulgen)会長は、ISの最後の拠点とトルコ国境との距離が兵站(へいたん)面で「現実的な問題」になっていると分析する。「国境から敵地までこれほど長い距離がある状況で、トルコがどのように軍事作戦を指揮するのか判然としない」

 英王立国際問題研究所(チャタムハウス、Chatham House)」の中東・北アフリカプログラムの責任者、リナ・ハティーブ(Lina Khatib)氏は、エルドアン氏はトルコにISを根絶させるための「腹案」がないまま、トランプ氏に対してそれが可能だと確約したと指摘。その上で、トルコの真の狙いは「米軍撤収の機会を利用してYPGに打撃を加えることだ」との見解を示した。(c)AFP/Ezzedine SAID