【1月12日 AFP】地球温暖化によってさまざまな海洋生物や地球の主要な食料供給源が脅かされる中、世界の海洋温暖化のペースが加速しているとする研究論文が10日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。

 この研究は中国科学院(Chinese Academy of Sciences)主導によるもの。過去の報告では、地球温暖化は近年「休止」状態にあるとされてきたが、論文はそうした見解を否定している。

 最新技術による調査結果はそのような中断が存在しないことを示しており、気候変動のペースと、その主な緩衝材である海洋への影響について新たな懸念が持ち上がっている。

 論文の共著者の一人で、米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)エネルギー・資源グループ(Energy and Resources Group)の大学院生、ジーク・ハウスファーザー(Zeke Hausfather)氏は、「海洋温暖化は気候変動の非常に重要な指標だ。従来考えていたよりも急速に海洋が温暖化しているとの確かな証拠がある」と述べた。

 論文によれば、化石燃料由来の温室効果ガスによって地球の表面にとどまった余剰熱の約93%は、世界の海洋に蓄積されている。

 論文はより正確な数値測定が可能になった主な要因として、漂流式のブイ型ロボット4000機近くからなる海洋観測ネットワーク「アルゴ(Argo)」を挙げている。

「アルゴ」のブイは世界中の海を漂流し、2、3日に1回の頻度で水深2000メートルまで潜って水温や水素イオン指数(pH)、塩分濃度などを測定。「2000年代半ばから、海洋の熱含有量に関するデータを安定的に、広い範囲で供給している」という。

 新たな分析によれば、海洋温暖化は、気温上昇と同等のペースで進んでいる。

 論文はモデルによる予測として、温室効果ガス削減の取り組みが一切行われなかった場合、「世界の海洋における水深2000メートルまでの水温は、今世紀末までに0.78度上昇する」と指摘。水は温度上昇に伴い体積が増すため、予測の通りなら海水面が約30センチ上昇すると説明した。この上昇は、氷河や氷床の融解による上昇に上乗せさせる。

 ハウスファーザー氏は「2018年の大気温は史上4番目の高さだったとみられるが、海洋の温度は2016年、2017年に続き、間違いなく史上最高を更新する」と指摘。

 その上で「地球温暖化の指標の変化は、大気中よりも海洋での方がはるかに測定しやすい」と述べた。(c)AFP