【12月29日 AFP】サウジアラビア人のジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件をめぐって国際社会から非難の声が上がる中、サウジアラビアの新外相にイブラヒム・アッサーフ(Ibrahim al-Assaf)氏が起用されることになった。同氏は28日、AFPのインタビューに応じ、同国が危機にあるという声や、前任者が降格させられたとの臆測を一蹴した。

 アッサーフ新外相は27日、サルマン国王(King Salman)の勅令による大規模な内閣改造の一環として、アデル・ジュベイル(Adel al-Jubeir)前外相の後任に就任した。長年にわたって財務相を務めた経験を持つアッサーフ氏は昨年、「汚職対策」との名目で行われた一斉検挙で一時的に拘束されていた。

 今回の突然の内閣改造は、遠ざけられていたアッサーフ氏を昇格させることで、カショギ氏殺害事件を受けて国際社会からの厳しい目にさらされたムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子(33)による政策決定に、うわべだけにせよチェック・アンド・バランス(権力分立による抑制と均衡のシステム)をもたらす試みの一環との見方もある。

 しかし、アッサーフ氏は外相就任後初となるインタビューでAFPに対し、今回の内閣改造の理由はカショギ氏の事件ではなく、政府機構を効率化する必要性から実施されたと主張。マホガニー製の家具のほか、壁に象牙や狩りのトロフィー(戦利品)などが飾られた首都リヤドの自宅でアッサーフ氏はまた、「ジャマル・カショギ氏の問題は……われわれ全員を悲しみに沈ませた」と語った。

 その一方、サルマン皇太子が指揮を執る社会・経済改革に言及し、「だが全体として見れば、わが国は危機にあるのではなく、転換期にある」と説明した。

 前任者のジュベイル前外相もカショギ氏殺害をめぐる非難に対し、国際舞台でサルマン皇太子の擁護を精力的に展開。だが、同氏が内閣改造で外務担当の国務相に任命されたことをめぐっては、事件に対する国際的な非難を抑えることができなかったとして降格させられたのではないかとの臆測を招いていた。

 アッサーフ新外相はこの点について、「真実からほど遠い」と否定。降格人事ではなく、過度に官僚的なことで知られる外務省の改革を加速するための役割分担だと主張した。(c)AFP/Anuj CHOPRA