【12月29日 CNS】中国・安徽省(Anhui)黄山(Huangshan)風景区で、大雪の中、山を登る歩荷(ぼっか、荷物を背負い山小屋などへ荷物を運ぶ運搬業者)の動画が注目を集めている。

 動画に映る白髪の男性は、天秤棒の両脇に食料や消防器材などをひもで結び、雪の降り積もる石階段をゆっくりと登っている。男性の名は、方銀善(Fang Yinshan)さん(53)。黄山の中腹から、景観スポットの一つ迎客松(Yingkesong)までの7.5キロの山路を33年間登り続けている。

 方さんは午前6時、朝霧の漂う黄山風景区の物資運搬センター内で、出発の準備を整える。

 この日に運搬する荷物の重量は60キロほど。方さんにとってはまだ軽い部類だ。

 登山路に沿って数百メートルほど進むと、山間で発生した濃霧のために方さんの白髪は水滴でいっぱいになる。慈光閣(Ciguangge)を通過すると、本格的な石段の登山が始まる。1万段以上ある階段を1段1段上っていき、山頂に近づくにつれて雲の中に進んでいく。方さんは安全確保のため、ここから滑り止めの付いた安全靴に履き替える。

 連日の大雪で、いつもとは若干状況の異なる黄山。帽子や防寒具を身に着けて雪景色を楽しむ一般登山客とは異なり、方さんの服装はやや薄着だ。重労働のためあまり寒さを感じないのと、薄着の方が動きやすいのだという。

 降雪時の石階段は滑りやすく、普段の天候と比べると難度も高くなる。方さんは歩く速度を落とし慎重に前に進んでいく。「最も重要なことは安全。降雪の日の登頂は、積雪の状況や、別の登山者が雪の階段を上った足跡などから判断し、最適なルートを登る。ここ数年大きな問題は起こっていない」と話す。

 午前11時、約5時間後に目的地のホテルに到着。荷物を渡すと方さんは共に同行した歩荷と昼食を取りながら、つかの間の休息をとる。昼食が終わると、方さんはすぐに天秤棒を担ぎ出し、今度はホテルの使用済みリネンを運び出すために下山を始める。午後4時半、運搬センターに到着した方さんの1日の業務は終了した。

 ここまでの往復行程で、方さんの報酬は約300元(約4800円)。「以前に比べ給料はずっと良くなった。年収は6~7万元(約97~114万円)ぐらいで、仕事も安定している」

 黄山の観光地化に伴い、観光客の数も物資運搬の需要も年々増加する一方、歩荷は大幅に減少している。慈光閣管理施設責任者の鄭江さんによると、10年前は450人近くいたが、今では3分の1程度まで減少し、平均年齢は51歳だという。

 鄭さんは、「歩荷の高齢化問題は、現役の人たちに大きな負担となっている。仕事による疲労度も、若い人たちをちゅうちょさせる原因だ。黄山の歩荷チームは早急にテコ入れを図らなくてはならない」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News