■ロシアとイランの影響力増大

 米国がシリア撤退を表明した一方、シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権の同盟国であるロシアとイランに撤退の兆しは見られない。

 ロシアはかねて、同盟国シリアを世界における影響力を取り戻すための戦略的資産とみなしている。また、イスラム教シーア派(Shiite)を国教とするイランはスンニ派(Sunni)原理主義者との戦いを宗教的義務とみなしており、シーア派の分派であるアラウィ派(Alawite)に属するアサド大統領を支援している。

 米シンクタンク、ハドソン研究所(Hudson Institute)のヨナス・パレロプレスナー(Jonas Parello-Plesner)研究員は米軍の撤退について、「シリアにおけるロシアの陰の実力者としての立場を決定的なものにするだろう」と指摘した。

■欧州のリスク

 ISはシリアにおける支配地のほぼ全てを失ったが、海外で攻撃を実行する可能性のある支持者が数千人いるとみられている。また、こうした支持者は欧州市民の中に紛れ込んでいることが多いという。

 米軍の撤退により、シリアに少数の特殊部隊を派遣しているフランスや、ひそかに多数の兵士を派遣していると報じられている英国は取り残されることになる。

 ヒー・フェルホフスタット(Guy Verhofstadt)元ベルギー首相は米軍の撤退について、ロシアとイラン、トルコおよびその代理勢力、そしてアサド政権の勝利となるだろうと指摘。

 フェルホフスタット氏は「当然ながら、欧州市民はこれまで以上に攻撃を受けやすくなる。周辺地域の安定の一助となる国防軍を持たないということが、どれほどおかしいものかを示すものだ」とツイートした。(c)AFP