13歳ムエタイ選手死亡、子どもの試合禁止で議論 背景に貧困問題も
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■脳の損傷
タイ・バンコクのラマティボディ病院(Ramathibodi Hospital)で子どもの安全と事故防止に取り組む「Child Safety Promotion and Injury Prevention Center」は、2012年から5年にわたり、335人の子どものムエタイ選手と252人のムエタイ選手ではない子どもを対象にMRI検査を実施・比較した。
同センター長のアディサク・パリタポンガーンピム(Adisak Plitponkarnpim)氏によると、子どものムエタイ選手は一般的な子どもに比べ、「明らかに」脳の破損が多く見られ、IQ(知能指数)も低かったという。
アディサク氏は、「子どもの頭蓋骨や筋肉は発達し切っていないために損傷を受けやすい」と述べ、損傷が蓄積されると、成人後のアルツハイマー病やパーキンソン病リスクが増す恐れもあると指摘している。
コーチ、ジムのオーナー、成人の選手らは、改正案について複雑な反応を示している。ムエタイからボクシングに転向して王者となったタイの選手たちが、子どものころからムエタイでその技術を磨いてきたためだ。
今年、WBC世界ミニマム級王者となったワンヒン・ミナヨーティン(Wanheng Menayothin)選手は、12歳で地方からバンコクに移り、試合に出ていた。また、1985年五輪で銀メダルを獲得したタウィー・アンポンマハー(Tawee Umpornmaha)氏も12歳からムエタイの試合に出ていた。
ムエタイは、ゴルフやテニスのようにお金がかからないため、貧しい子どもにもアクセス可能なスポーツだ。
ムエタイについてあるジムのオーナーは、「多くの子どもにとっては貧困から抜け出す手段となっている」と指摘し、子どもに目的意識を持たせ、「スポーツの枠を超えた将来の夢を与えている」と語った。ただ、子どものムエタイの是非は極めて繊細な問題であるとして、匿名での取材を希望した。