■待たされる移民の暮らし

 アハマドさんはこの2年間、20平方メートルに満たないシェルターの一部屋を他の移民2人と共有している。上の階には共用キッチンもあるが、共同生活には「たばこ、乱雑さ、騒音」などの問題が常に付きまとうという。

 この間、ドイツ東部ケムニッツ(Chemnitz)では、行政機関の手続きの遅れにより足止めされていたイラク人の亡命申請者が、ドイツ人男性を刃物で刺して殺害したとされる事件まで発生。この一件がきっかけで、反移民デモが相次いだ。

 容疑者は、欧州連合(EU)域内の最初の到着地であるブルガリアに送還されることになっていたが、ホルスト・ゼーホーファー(Horst Seehofer)内相によると、行政機関が期限内に執行することができなかったのだという。

 カーリーな髪がエジプトのサッカー選手モハメド・サラー(Mohamed Salah)を思い起こさせるアハマドさん。本人も大のサッカーファンだ。希望は、高齢化により慢性的な労働人口不足に陥っているドイツで、介護士養成講座を受講することだ。

 裁判所の決定を待つ間、アハマドさんは介護分野での実習が可能となる資格の取得を目指している。

 新たな移民を労働力とする取り組みには、一定の成果が出ていることもデータで示されている。労働局によると、2015年以降に到着した約難民29万人が、すでに仕事を見つけたという。(c)AFP/Yannick PASQUET