■退任の時期は熟していたのか

 アリババの売上高は、6四半期連続で55%を超える成長を維持し、アナリストの予想を上回ることが多かった。

 また、同社はECにとどまらず、小売りやスマート物流、インターネット決済、ビッグデータ、クラウドに事業を延伸させている。

 マー会長は2年前、「新小売、新製造、新金融、新技術、新エネルギーの『5新』をアリババのコア戦略とする。特に新小売は大事だ」と述べた。

 アリババの幹部人材やパートナー制度も、おおむねうまく行っている。内部関係者は「この2年、アリババは最も良い状態にある。競争のプレッシャーはあるが、2017年からアリババの戦略はよりクリアになった」と語った。

■今後は?

 マー会長は完全に引退するのか。たぶん違う。

 おそらく彼はより忙しくなる。マー会長自身、自分のことを「じっとしていられない人」と言っている。今後は、事業の重心を教育に戻すのだろう。

 この数年、マー会長は教育に投じるエネルギーを増やしている。微博(ウェイボー、Weibo)での自分のアカウント名も「田舎教師のスポークスマン」と変えた。

 超多忙にもかかわらず、毎年の教育イベントには欠かさず出席している。

 さらに、この2年ほど、マー会長は従業員からも「マー先生」と呼ばれるようになっていた。なぜなら本人が、その呼ばれ方を好んでいたからだ。

 マー会長はこの10年、自身の引き際について考え続けてきた。しかしそれは、「人生を楽しむため」というより、「もっと多くのことをするため」だったようだ。

 マー会長が去った後のアリババはどうなるのだろうか。

 マー会長は2009年、「パートナー制度」をつくり、来るべき日に備え、人事制度を整えてきた。

 アリババ関係者は、「アリババに限らず、螞蟻金融服務(アントフィナンシャル、Ant Financial%)、菜鳥網絡(Cainiao Network)、阿里雲(アリクラウド、Alibaba Cloud)などはいずれも、1度はトップが交代している。それでも企業の成長は鈍化するどころか、さらに成長している。この事実がマー会長をかなり安心させただろう」と語る。

 パートナー制度には、大株主や創業メンバーだけでなく、企業文化を深く理解し、業務上大きな貢献をした従業員も含まれている。19年は、パートナー制度が始まって10年の節目でもある。

■「私はずっとアリババのものだ」

 マー会長は今後も、アリババの「1号社員」でありパートナーだ。彼は自らの文章でも「アリババのパートナー組織のために努力と貢献を続ける」と明記している。これからもアリババの精神的支柱であり、エコシステムの中心だろう。

 マー会長は「私は皆に誓う。アリババは私のものではないが、私はずっとアリババのものだ」と書いた。(c)CNS/JCM/AFPBB News