「記憶に留めておく一枚の報道写真」
私がこの写真を選んだ理由は、この写真が他のよく見るテロの写真とは異なっていると感じたからだ。テロに関連する写真というと、大抵人々が叫んでいたり泣いていたりなど混乱している写真や、死体や負傷者がまざまざと映っている残酷な写真や、テロリストたちの写真などを目にすることが多いだろう。しかしこの写真は混乱している写真でも、見るに堪えない残酷な写真でも、テロリストたちの写真でもない。とてもシンプルではあるが、このシンプルさが逆に私の心を揺さぶるものがあり、強く印象に残った。この写真の棺桶の中にいるのは警察の方とみられる。テロがなければ今頃その体で人々を助けていたであろうに、このように一つの棺桶に閉ざされてしまうことから見られる、人の死の何とも形容しがたい無念さを痛感した。そしてそれゆえの人の命の重さというものを、この写真は静かに物語っているのだろう。


早稲田大学 松永悠希 テロリズムセクション